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2. 発達の変動性と橋渡しの重要性


昨日、「橋渡し」という発達支援・学習支援の鍵となる概念を解説しました。その中で、橋渡しには既存の発達段階から次の発達段階へ橋を架ける作用があり、発達における安定的な足場(scaffold)を構築する役割があると述べました。

それ以外にも、橋渡しによってある発達領域の外堀(アウトライン)を築き上げることが可能になり、仮に知識やスキルが現在欠落していたとしても、橋渡しによって生まれた外堀は現在欠落している要素を埋めるように私たちを導いてくれます。これらが昨日紹介した内容の要約です。

「発達の変動性」という現象を考慮すると、上記の点以外にも橋渡しが重要となる理由が浮かび上がります。カート・フィッシャーが強調しているように、私たち人間は社会的な文脈に規定され、文脈に応じてスキルレベルを変化させる生き物です。

実はこうした発達の変動性というのは、カート・フィッシャーより以前に提唱されていた考え方であって、ロシアの発達心理学者レフ・ヴィゴツキーなどもこの点を指摘していました。

カート・フィッシャーらによる最近の研究結果によると、素人と専門家がある発達領域で見せるスキルレベルには大きな違いがあることが分かりました。具体的に言うと、素人が他者の支援なしに(発達の足場なしに)新しい知識領域・スキル領域のタスクをおこなった場合、彼らがそこで発揮することのできるスキルレベルには大きなばらつきが見られました。

それに対して、専門家の場合、彼らが未知なる領域で活動をおこなう状況に置かれたとしても、素人のようなスキルレベルの変動性がほとんど見られず、安定的なパフォーマンスを発揮することができました。

興味深いのは、仮に素人であったとしても、専門家の支援に基づいて活動に従事すれば、ばらつきの見られたスキルレベルが安定的なものに変化したことです。これは何も専門家ー素人の関係のみならず、両親ー子供あるいは教師ー生徒の関係においても生じる現象です。

つまり、橋渡しは次の発達段階に至るための橋渡しをするだけではなく、橋を架けようとしている現場(次なる発達段階)の活動をより安定的なものとする作用があります。皆さんは職場や家庭において、部下や子供に対してどのような橋渡しをおこなっているでしょうか?あるいは上司や教師からどのような橋渡しの恩恵を受けているでしょうか?

質問・コメント・記事の共有をご自由にしていただければ幸いです。 【頂いたコメントおよび質問事項】

Q:適切なサポート=橋渡しがあると、次の発達段階にスムーズに移行できる&新しいレベルのスキルを安定的に発揮しやすい、ということは直観的に「そうだろうな」と思います。新しい段階に進むことは不安と傷み(たとえばキーガンの発達理論で言うところのレベル4→5ならば自己喪失)を伴うので、支援なしにレベルアップする場合、今までのレベルにとどまる方が”安全”だとういう直観があるからじゃないか、と思います。一方、この不安感に対して、支援者から”この不安を乗り越えた先にあるもの”への肯定を得られれば、不安や傷みに立ち向かう動機づけになりうるのでしょう。

さて、この文章でよくわからなかったのは「専門家」の定義です。「、専門家の場合、彼らが未知なる領域で活動をおこなう状況に置かれたとしても、素人のようなスキルレベルの変動性がほとんど見られず、安定的なパフォーマンスを発揮することができました」とありますが、専門家が支援者ではなく発達する主体である時、支援がなくとも(もしかすると自分自身が自分の支援者となって)スムーズに次の発達段階に上がれるということですか? A:ご質問どうもありがとうございます。ここでいう専門家とは、単純にある領域において知識とスキルが豊富な者を指します。実はカート・フィッシャーは、ピアジェやキーガンが想定するような「静的な発達構造」を批判しており、そもそも発達構造というのは文脈に応じて動的に変化するものであると捉えています。

また発達構造という概念よりも、フィッシャーは「スキル」という言葉を好んで使っています。キーガンやラスキーの理論では、発達構造を通じて人間は意味を構築していると想定しています。これはある意味で正しいと思いますが、フィッシャーはそうした大きな装置(発達構造)を研究対象としているのではなく、実際に現実世界のある文脈で発揮される活動(スキル)の構造的発達に着目しました。

上記のようなフィッシャーの発達思想に立つと、支援がなくともスムーズに次の発達段階に上がれるというよりも、専門家が自分の専門領域内で他者の支援なしに活動をする時に、領域内で新しいタスクに直面しても安定的なパフォーマンス(スキル)を発揮できるという意味です。一方、素人は支援がなければ、新しいタスクにおいて不安定なパフォーマンスを発揮します。

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