このたび、5月18日のゼミナールのクラスから、新講座として「対人支援·組織開発のための瑜伽行唯識学講座:世親菩薩の『唯識三十頌』を通じた豊かな心の成長の実現に向かって」を開講することにいたしました。
本講座は、ゆっくりと時間をかけて、基礎から「大乗仏教瑜伽行唯識学(ゆがぎょうゆいしきがく:略して「唯識学」と呼んでいます)」を学んでいく内容になっております。
「瑜伽行」という言葉にあるように、唯識学を開拓した人たちは瑜伽師と呼ばれる実践者集団でありました。彼らは当時の仏教が思想的な側面に傾斜する傾向がある点に問題意識を持ち、日常生活に根差した実践をこそ大切にしていました。つまり瑜伽師たちは、日頃私たちが生きている生活世界の中で直面する心の問題に重点を当てていたのです。
自分一人でいる時にも、他者と接する時にも、私たちの心は絶えず何かしら動きをみせます。そうした心の微細な動きに注目し、瑜伽師たちは心の働きとメカニズムを詳細に分析し、そして分析で留まらず、どのようにすれば心の問題を解決できるのかの実践方法を無数に編み出していきました。それは多様な観法行に結実していったことからも分かるように、唯識学は単なる理論体系や思想体系ではございません。兎にも角にも実践を重んじるものなのです。
そうした思いから、心の成長(心の器の拡張)に関する実践をとにかく重んじる唯識学を、対人支援や組織開発の場で活かすことを目的にした講座を開催させていただくことになった次第です。
正直なところ、唯識学はこれまで私が長らく探究してきた成人発達理論やインテグラル理論を遥かに凌ぐ広さと深さを持つ豊かな心の成長理論と実践体系を備えています。私自身、まさか成人発達理論やインテグラル理論を超える心の成長理論があるなどとは想像もしておらず、唯識学と出会った時には本当に衝撃を受けました。
唯識学と出会って日は浅く、私もまだまだ初学者ですので、お互いに初学者目線で共に日本の文化遺産‧精神遺産(唯識学は興福寺や薬師寺を中心として日本の法相宗の教義であるゆえ、そのように位置付けています)と言える唯識学を基礎から丁寧に一緒に学んでいければと思います。皆様ご多忙だと存じ上げておりますので、毎回の予習量は多くないように、じっくり学びを深めていけるようにしていきたいと思います。
対人支援や組織開発にご関心のある皆様と、成人発達理論やインテグラル理論以上に奥深い心の成長発達理論と実践体系を持った唯識学を学べたらとても嬉しく思います。
今回の講座で扱う書籍は『唯識三十頌 要講』となり、解説スライドのPDFもご参考までに添付させていただきます。唯識の入門書としては『唯識入門』と『唯識の思想』の2冊が大変お勧めになります。
唯識を扱う第80回のクラスが始まるまであと3回ほどクラスがございますが、そこでは神道の世界観と人間発達を絡めた内容が続いております。唯識を扱うクラスの前に講座にお申し込みいただければ、神道を扱うクラスへの飛び入り参加も大歓迎ですし、ここまでのアーカイブ動画の視聴を通じて、唯識学を扱うまでの準備にしていただけると幸いです。
コースシラバス
(課題図書)『唯識三十頌 要講』
(お勧めの入門書)『唯識入門』
(お勧めの入門書)『唯識の思想』
第80回のトピック(5/18/2024: 20:00-21:30):第1章「『唯識三十頌』とは」
第81回のトピック(5/25/2024: 20:00-21:30):第2章「首帰依す」
第82回のトピック(6/1/2024: 20:00-21:30):第3章「我‧法の種々相」
第83回のトピック(6/8/2024: 20:00-21:30):第4章「奥深い人格の底」
第84回のトピック(6/15/2024: 20:00-21:30):第5章「深い利己性」
第85回のトピック(6/22/2024: 20:00-21:30):第6章「第三能変」
第86回のトピック(6/29/2024: 20:00-21:30):第7章「心所」
第87回のトピック(7/6/2024: 20:00-21:30):第8章「諸識の動き(I)」
第88回のトピック(7/13/2024: 20:00-21:30):第9章「諸識の動き(II)」
第89回のトピック(7/20/2024: 20:00-21:30):第10章「時間の流れのなかで」
第90回のトピック(7/27/2024: 20:00-21:30):第11章「三性とは」
第91回のトピック(8/3/2024: 20:00-21:30):第12章「三無性とは」
第92回のトピック(8/10/2024: 20:00-21:30):第13章「修行論」
第93回のトピック(8/17/2024: 20:00-21:30):第14章「仏の境界 究竟位」
第94回のトピック(8/24/2024: 20:00-21:30):第15章「誓い すべての群生とともに」
⭐️講座(ゼミナール)の詳細・お申し込みはこちらより
講座の期間は、5/18から8/24までのおよそ3ヶ月間です。講座終了後、そのタイミングでゼミナールをご退会いただけますし、続く第二部の唯識学講座にご参加いただくこともできます。
【本講座の開講の思い】
唯識学は本来、「大乗仏教の基礎学」という位置付けで、心の詳細な理解と心の修練のために長らく大乗仏教の僧侶たちに親しまれてきた教えになります。基本的に日本の仏教は大乗仏教であり、大乗仏教を構成する二大柱の中観派の空(くう)の思想は依然として僧侶にも親しまれ、一般の人でも般若心経を含めて、空の思想は比較的馴染みの深いものかと思います。
しかしながら、もう1つの大事な柱である唯識派の唯識思想は、鎌倉新仏教の様々な宗派の台頭を受けてどんどん下火となり、今では知る人ぞ知る思想になってしまっています。
個人的にこのような状況を大変残念に感じております。というのも、心を扱う思想体系で言えば、唯識学は間違いなく成人発達理論やインテグラル理論を超えたものであるという確信があり、心を扱う智の結晶としての唯識学は僧侶たちの心の修練に役立つだけではなく、私たち一般の人たちの心の成長に大きく寄与するものだと考えているからです。
かつて成人発達理論やインテグラル理論もほとんど誰からも目をかけられることはなかったように、唯識学も知る人ぞ知る叡智の体系となってしまっていて、多くの人たちに知られないままになっているというのは由々しき事態であり、見過ごすことはできないという思いから、自分の今後の人生を賭けて、どうしてもこれを多くの人に届けたいという思いが日々募っています。そのような思いから、今回特別講座として唯識学を扱うことにいたしました。
何かのご縁でこの講座を通じて唯識学を学ぶことになった方々には深く感謝をし、そのご縁を大切にしながら、唯識学をそれぞれのフィールドで存分に活かしていただきたいと思う次第です。
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